「朝倉憂さん?」

「だれか」
「朝倉さんをみませんでしたか?」

はじめて、クラスメートだと
先ほど知った生徒に聞くだけ
無駄だろうと、
心の中で突っ込みながら、
隣りの空席に目をやる。

どうやら、この空席に
お座りになる方のお名前は
朝倉さんというらしい。

覚えておこう。
きっと、普通ではないはずだ。

初回HRから、欠席する方である。
どんな人物であるか、
興味があるのか思わない方が
おかしいと言うのが人間であり、
ちょっとした何かわからない。

淡い期待をもってしまうのが、
正常な15才の男子だろう。

断じて懺悔しよう、
この時は未だ、朝倉という
同級生に何か淡い夢を
もっていたことを。

それが、
こののち学生生活のすべてを
破壊されることになろうとも
知らずに。