俺がそう言っても、華は目を合わせようとしない

しびれを切らした俺は、華に近づいた。


「だから、ちゃんと目を見て言えって「海といると、九年前のあの日を思い出すの!」

俺の足が、ピタッと止まる。


「海といると…あの日を思い出して怖いの。」

段々小さくなっていく華の声

俺の中で、何かが崩れていった。

「…分かった。」

華がやっと顔を上げる。
今にも泣きそうな顔をしていた。

華を泣かせたくなかった


なのに、今泣かしてる原因はーー俺なんだ


「じゃあな、華。」

俺は華を慰めることもせず
横を通り過ぎて行った。


サヨナラ、華

俺に、幸せな時間をありがとな



俺が通り過ぎた後、華が泣きながら「海。」と呼んでたことなんて


俺は知らない