「え、嘘 だって今日は李玖さんと一緒だって和華さんが・・・」

「あぁ。和華の報告はちゃんと聞いたよ でもやっぱりキミのことが気になってね」

夕焼けが邪魔して彼の顔が良く見えない。

だが、きっと彼は笑っている。

そんな気がした。

「ありがとう、ございます わざわざ・・・」

「そんなお礼を言われるようなことじゃない。 ・・・んで。ちょっとお願いがあるんだがいいかな?」

彼が私の隣に来て、歩くことを促してくる。

私は自然と足が動いて、彼の歩調に合わせていた。

「お願いって・・なんですか?」

「え、あぁ 実はね、今日少し厄介なことが起きてね」

「厄介? 何がですか」

「んー、そのねぇ 李玖がやりやがって、逃げちゃった! って感じかな」

・・・全然意味が分からないのは私だけでしょうか。

こんなに説明が下手な人も初めて見た気がする。

「あの、意味が分からないんでもういろいろ省略します。 私は何をすればいいんですか?」

「あ、うん えとね コレ持って」

そう言って手渡されたのは、鞘のない、むき出しの日本刀。

え、ちょっと待て!!?

やっぱり省略は失敗だったかも!!!

「ちょ、憑雲さん!? これ、どうしたっていうんですか!!」

「んー? あ、来たっ!!」

私の後ろを見て、彼は地面を蹴って簡単に家の塀に立った。

あれ、この人簡単に二、三メートルの塀登ったよ!?