「さ、僕らも帰ろう 皐月」

「ハイ。 ・・あの」

彼が歩き出し、私は呼び止める。

ゆっくりと彼は振り向いてくれる。

「どうした? 何かあった?」

「いえ・・・また、あのお店きてくれますよね?」

どこか不安だった。

オーナーとあんなに言い合って、それでも。

彼は来てくれるか。

そうでなければ彼との接点が無くなってしまう。

彼に、逢えなくなってしまう。

「心配ないよ。 彼も今日の記憶はないから あったとしても夢を見てたくらいにしか思わない程度にだから」

「・・・じゃぁ、期待してもいいんですか」

伺うようにそういうと彼はそれを肯定するかのように笑った。

「まぁ、今日はいけないけどね。 さすがに昨日の今日だから思い出されるといろいろめんどくさいし」

「・・分かりました。 それだけ聞ければ十分です」

そういって、私は彼の前を歩き出した。

「あんまり無理しないようにね」

「・・・大丈夫、です」

ちゃんと笑えてるか分からないけど、頑張って笑顔を作る。

正直、オーナーが怖い。

でも歩き出さなければ。

私は懸命に歩き続けた。