ここにいるかぎり

 

 黙り込んだ俺を察して、

 那衣は 下を向くと
 小さく笑って
 「ごめんね」と言った。


 「…那衣」

 「ごめん、こんな
 わざわざきいたりして」

 「……いいよ」



 沈黙に包まれた空気の中で
 薬を飲み込むと、

 コップを置いて
 頭まで布団をかぶって
 那衣は横になった。


 「…、…風呂掃除してくる」


 
 適当に理由をつけて
 俺は部屋をあとにした。



 那衣が、声を殺して
 泣いてるのが分かったから。