「琴葉、これを持っていきなさい」 朝食のあと荷物を整理していると、父が私に指輪を渡した。 「これは?」 「母さんの、形見だ」 「そんな大切なもの…いいの?」 「もちろん。辛いとき、きっと母さんが琴葉を守ってくれる。 母さんが、側にいてくれる」 「お父さん…ありがとう」 「さっき、中野さんから連絡があった。お昼ごろ、迎えに来てくれるそうだ」 「そう……もうすぐだね」