「分かってる……気付いてるよ」 今の俺は、こう答えるので精一杯だった。 「気付いてるなら、どうして彼女を愛そうとしない? どうして、彼女を見てあげないんだ? お前が…お前が彼女を愛しさえすれば、俺がこんなことをする必要もなかったのに」 こんなにも悲しそうな目をした兄さんを見るのは初めてだった。 俺はその目に、恐怖心さえ覚えた。 「兄さん……何をする気なんだよ?」