「奏斗」 私が声を掛けても返事はない。 出来るだけ明るく振る舞おうと私なりに努力しているけれど、こんな奏斗の姿を見ているのは、胸が苦しかった。 それに、今の奏斗には、きっと私なんか少しも見えていないんだよね… 「奏斗」 今度はさっきよりも大きな声で、名前を呼んだ。 「あ…何?」 心ここにあらず、という感じで奏斗がそっけなく答える。