この話を聞きながら、ふと思った。 もし、私が沙穂さんだったら、奏斗の気持ちを喜んで受け取ったのに、と。 どうして、人の気持ちは上手く通じ合わないんだろう? 誰かを好きになったって、辛い片想いばっかり。 「奏斗は、何も知らないから」 突然、静かに沙穂さんが呟いた。 「何…も…?」 「そう。宮殿の外にある自由も、“普通”に暮らすことも、家族の温かさも、そして……愛されることの幸せも」 「愛されることの幸せ……」