なんとなく外の空気に触れたくなって、私は一人テラスに出た。 昼間のうだるような暑さが嘘であったかのように、時々吹く風がひんやりとして気持ちいい。 「琴葉ちゃん」 「あ、和也さん…」 私に後ろから声を掛けてきたのは、和也さんだった。 「またここにいた。琴葉ちゃん、テラス好きなの?」 「はい。空が綺麗に見えるし、なんとなく落ち着くんです」 「そっか…俺と一緒だ。 俺も、ここに来ると一瞬だけ宮殿の息苦しさを忘れられるんだ」