中野さんたちが帰ってから、私も父も蓮にぃも、誰も言葉を発しようとしなかった。


時計だけが規則正しいリズムを刻み、時間が過ぎていくのを知らせてくれる。


その音が妙に寂しく感じられて、急に沈黙に耐えられなくなった私は、頭に浮かんだ言葉を言った。


「お父さん…美味しいもの食べたいな」

「えっ?」


「楽しく過ごしたいから。今日の夜は」


せめて家族で過ごせる最後の夜は、笑顔で過ごしたい。

涙ではなく、笑顔で…