ある朝ふと目覚めてすぐに、記憶の中の幼き頃の私が泣いた。両手を広げて母に抱っこを求める仕草で大声で泣いた。暗い廊下に私の泣き声だけが響く。遠ざかる母の姿。走って追いかけて行こうとしても後ろから引っぱられる背中。振り向くとまだ幼き二つ上の兄。兄も泣いた。二人で泣いた。この広く暗く怖い夜に私達は二人で泣いた…。まだ3歳だった。
私の創世記の中でのいきなりの氷河期であった。