「手、もう出していいよ」
「はぁ」
何がしたかったんだろう・・・・。
そう疑問に思いながらも、お湯の中からそっと手を出す。
ほんの少し前までは本能をむき出しにした狼だったくせに、今はムダに爽やかな笑顔。
この切り替えの早さ、5年つき合ってもいまだに慣れないわ。
いろいろとツラくないんだろうかと変な心配をしつつ、ほら早く!と孝明が急かすため、自分の手をまじまじと見てみる。
すると───・・。
キラリ。
薬指に光るものがあった。
「・・・・え」
「本当はこんな感じで渡すつもりじゃなかったんだけど、それ・・・・婚約指輪、ってヤツ」
「・・・・えっ」
「沙織から聞いてはいたんだ、俺の様子が最近おかしいことをヒカリが心配してるって。でも、とうてい話せない。だって、話したらサプライズじゃないだろ?」
「えっ、じゃ、じゃあ?」
「そう。沙織には俺から頼んで知らないフリをしてもらった。ヒカリの喜んだ顔が見たくて」
そんな・・・・。
こんなの想定外だよ・・・・。


