そうニコニコ顔で言われて、よく分からないけど素直に従った。

すると・・・・ちゃぷん。

あたしの手を取った孝明は、ニコニコ顔を崩さないまま何も言わずにお湯の中に手を沈める。


「えっ? なんで沈めるの?」


当然、あたしはそう聞くワケで。

もっと言うと、この状況は焦らされているというワケで・・・・その気にさせたのは孝明なのに、なぜ?

ますます訳が分からない。

けれど、その孝明は・・・・。


「秘密。今やってるからちょっと待って。コレ、なかなか難しい」

「また秘密!? てか、難しいとかやってるって何なの?」

「いいから、いいから」


聞いてもムダなパターン、再び。

もうこうなったらヤケだ!と開き直ることにして、お湯の中で指を引っ張ったり曲げたり。

あくせくしながら“何か”をしている孝明がそれを終えるまで、じっと待つことにした。


「よし、もうちょいだ!」


やがてコツを掴んだらしい孝明。

そう嬉しそうにつぶやくと、最後にギューッとあたしの指の付け根に何かを押しつけた。