母とは、顔を合わせれば一言、二言程度ではあったが、言葉を交わせる様になっていたが、自分から話し掛けるという事はなかった。

心の中では、もう昔の事だと思えていても、本人を前にすると、なかなか素直になれずにいた。



母のあんな姿を見た時、体が金縛りにあったかの様な感覚にとらわれ、言葉を発っする事さえできなかった。ただ、苦しむ母と、あわてふためく父を見ていた。


私は何もできなかった…。


プルルルルルルッ…




自宅の電話が鳴った。


〈ただいま、留守にしております。メッセージをどうぞ。プーッ…〉



「風花…。いないのかぁ?…母さん、今日は帰れないから、父さんも…。」


その声は、父からだった。