◇◆あじさい◆◇

『行こうぜっ。』


私は、とっつぁんの声に平常心を装って笑った。


『うん!
やるねぇ〜!このぉ〜!』

わざと祐介に笑いかけて自転車を走らせた。

チクチクと痛む胸を抑えながら…。




『…なぁ?』



私ととっつぁんが校門に向かおうとした瞬間、祐介は2人を呼び止めた。




『えぇっ?』



私達が、自転車を足で止め振り向くと、祐介は自転車を降りた。



『…今日は、
歩いて帰らないか?』




祐介の言葉に、少しだけ胸の痛みが和らいだ気がした…。




『えっ。だって急がねぇ〜と、あいつら家来ちゃうじゃん!?』


とっつぁんは校門を指差して言った。



『歩こう…。とっつぁん。』


私の口からは何の躊躇いもなく、その言葉が出てきた。


『えっ?』


『大丈夫。和也達も歩いてるよ。きっと…。』




とっつぁんは空気を読んだ…。




『…まっ、カオルちゃんも料理作んの間に合わねぇ〜とか言ってたしっ。

歩きますかぁ〜。』








私達はそうして、自転車を押しながら校門を出た。

3人揃って歩く最後の道をゆっくり…ゆっくり…歩きながら…。