◇◆あじさい◆◇

『風花っ!』



『あっ、今行くっ!』



校舎を見上げ動きを止めていた私は、とっつぁんの声に慌てて自転車にまたがった。





『せんぱ〜いっ!』




2人の元に駆け寄る女の子達…。



『…あっ、あのっ、
2年5組の田中 千秋ですっ!』



彼女は祐介の前に立ち、顔を真っ赤に染めている…。


『あのっ……。』


『頑張って!』

後ろから、もうひとりが後押しの声を掛ける。



『ずっと好きでしたっ!

だっ、第二ボタンをっ…』

祐介は一瞬目を丸くしたが、彼女の声に被せるように口を開いた。


『ありがとう。
…第二ボタンは予約済みだから、ココでいぃ?』


そう言うと、祐介はヒジをグッと曲げ、学ランの袖を見せた。



『はっ、はいっ!』



彼女は瞳を潤ませながらも、力強く返事をした。



祐介はプチッとボタンを契ると、彼女にそれを手渡した…。