◇◆あじさい◆◇

『なんでって言われても…。わかんない。わかんないけどぉ…、なんとなく好き。』



とっつぁんは、少し照れ臭そうに笑みを浮かべた。




『なに？』



『それさぁ、カオルちゃんの手づくりなんだよ…。』


とっつぁんの顔は、今まで見せた事のない程優しく見えた。



『とっつぁんママの？』


とっつぁんはママの事を名前で呼ぶ。小さい頃はママと呼んでいたけど、ある日『かぁちゃん』と呼んでみたらビンタが飛んだと言う。スナックのママとして『ママ』と呼ばれる事に抵抗はなかったが、『かぁちゃん』は許されなかったそうだ。