『…あそこに居たんだ…。お前…。』



『…えっ??』



私は、彼の言っている意味も、此処に来た理由も、分かっていなかった。




『…昔、

お前の母ちゃんと、

一度だけ話した事あんだ…。』




私は、驚きのあまり声にならなかった。




『…中学ん時になぁ…。


俺…、わざと遅刻してって、お前んち行ったんだ…。

裕介の、あん時の後だよ。

お前の母ちゃんに、

「風花は、ホントは友達かばって嘘ついたんだ〜」って…。


「あなた…、
優しい子だ…。」


って言われたよ。


そん時、

お前の母ちゃん…、

ホントに嬉しそうに笑った…。



そん時だよ。

お前の生い立ち聞いたの…。



「血が繋がってなくても、親子だから似るんだね…。」


って…。


ただ、素直になれなかっただけなんだ…。

お前も、…お前の母ちゃんも…。





此処で出会ったんだ。


…母ちゃんと…。』








私は、
彼と母との間に、そんなやり取りがあった事を初めて知った。


そして、
私が両親の実の子ではない事を、彼はずっと前に知っていた事…。



私は、彼の背中を抱きしめた。