◇◆あじさい◆◇

『…どうしても子供ができなかったんだ。もう、とっくに諦めていた頃だった…。父さんは、いつか、この子が本当の事を知ったら、悲しむんじゃないかと反対したんだが、母さんは聞かなかった…。
いつか本当の母親が迎えにきたら、その時は、ちゃんと引き渡す事を約束して、父さんも了解した…。

母さんは、
その子に、【風花】と名付けた…。自分が捨てられた事も分からずに、風に揺れる紫陽花を見てニコニコ笑ってたそうだ…。』



私は、その真実を知らされ、神様というのは、本当に酷い事をする…と、心の中で嘆いていた…。



『…風花。こんな時に辛い話をしてしまって、本当にすまない…。だけど、分かってくれるね？
父さんは、一度だってお前を、よその子だと思った事はない…。母さんも同じだ。お前が家に来てからは、本当に自分達の娘だと思って暮らしてきた…。それだけは、信じて欲しい…。』


父が、生まれて初めて、私に頭を下げた瞬間だった…。