「そっか……」



そう言ったっきり兄ちゃんは黙り、うなだれてしまった。



「俺の家な、貧乏なんだよ。
親父が会社に失敗して、借金まみれになって…」



急になにを言い出すんだ?この兄ちゃん?



「毎日毎日借金取りが俺ん家のドアを叩くんだ。
『金、返せっ』てな。
俺も弟も――10才なんだけどな、それが怖くて家の隅っこで震えてた」



兄ちゃんは唇を噛み締め、目が潤みだした。



え…泣いてんの?
ちょっと待って、こんな人の多いとこで泣かれたら困るんだけどっ!?



「だからこのミサンガを一個でも多く売って親を楽にしてあげたかったんだけどな……。
でもそんな嫌なら仕方ないな。
他の人をあたるよ……」



そういって兄ちゃんが後ろを向いた。




「ちょ、ちょっと待ってっ!」