妖魔04~聖域~

「何だよ、これ」

震えが止まらない。

生贄の祭壇にあるのは彼女の意識のみ、殻を失った核だけだ。

部屋の真ん中にある大きな試験管の中に溶液が入れられており、一紅い宝石が浮いている。

契約妖魔のコアだ。

「これが、実験の結果、なのか?」

少女の皮を剥いだというのか。

『輝きを秘めた王子様』

「お前、ずっとここに居たのか」

『泣いているの?』

俺の眼からは涙が流れていた。

「お前は悲しくないのか?」

『王子様が来てくれただけで嬉しい』

研究とは、犠牲にしなければならない事もある。

彼女は喜んでいるが、憎くはないのか。

外を見る目、人と話す口、音色を聴く耳を、奪われたというのに。

彼女の帰る場所がないといったのは、確かな話だ。

予想を反した出来事、苦痛を感じるのも当たり前のことだ。

「外にでたいか?」

『思い出の中の風の音を、光の眩しさを、感じたい』

「解った」

機械の操作はわからないので、近くにあった鉄の棒を拾い上げる。