妖魔04~聖域~

そうすると、俺とお吟さんはどちらが先に逝くのだろう。

それは、解らない。

「何か心配事があるのかね?」

俺の顔を見ていないのにも関わらず、心を見透かしているかのようだ。

「何も。それより、声の主に何をした?」

「何も」

気味の悪い声を上げて、前進するだけだ。

「俺が声を聞いたのは確かだ。だが、決して喜びを表現していなかった」

「研究所の暮らしは悪くはない。錯覚しているのだよ」

「嘘はやめておけよ。全ての実験が求めて行われたものではないだろ」

自分から望んで人間に歩み寄る妖魔は珍しいほうだ。

美咲は遣わされたから表に出て来たわけだ。

「さて、君は今までのチューナーと同じ結果になるのか、それとも、新たな結果を生み出すのか」

「そんなことは聞いちゃいない」

真実を隠す理由でもあるのか。

「契約妖魔はナンバーで呼んでいる。失敗作もいるから名前を覚えるのは面倒なんだ」

「話を聞けって」

「彼女はナンバー00。最初の契約妖魔だよ」

目の前の大きなの鉄扉は誰も寄せ付けず、開く事を拒絶しているようだ。

『白馬の王子様。全てを砕く牙を持つ星』

「これは」

「彼女は君を気に入っているようだね」

彼女は先にいる。