まだ夜までには時間がかかる。

食料の残量を考えて、いい加減切り上げなければならない。

サバイバルをしてもいいが、余計な体力は使いたくない。

吟さんの負担にもなる。

今日中にある程度の場所を見回ったら、お仕舞いにしよう。

体力を出来るだけ使わないように黙々と歩いていると、暑さからなのかは解らないが蜃気楼のような物が見える。

「いや、蜃気楼じゃねえ」

グランドキャニオンに似つかわしくない建物がはっきりと見えてた。

東京ドームぐらいはあるんじゃないだろうか。

古ぼけていて、所々が汚れている。

「休憩、出来そうだな」

「二人で風呂に入れるアルな」

「そうだな」

平常を装っているが、内心はハッピーだ。

近づくに連れて、実態が明らかとなっていく。

窓がいくつかあり、体に良いとは思えない煙を建物の色々な所から出している。

年数から言えば、数十年。

正面には誰にでも入れるような大きめの入り口があり、警備は置かれていない。

「うーん、入っても大丈夫か?」

「うーん、廃墟での一時、これまたオツなシチュエーションアル」

更に近づこうとすれば、突如斜め前の岩陰から巨体の男が現れる。