妖魔04~聖域~

親を殴るのは抵抗がある。

子供を放置した親でも、俺を産んでくれたんだ。

多大な苦痛を呼び出すなら、好んでやろうと思わない。

やりたくない。

だけど、やるしかない。

何もやらなくて吟が死ぬというのなら、何かをやって生きていける方がいい。

それが、見知った相手を本気で殴る事になってもだ。

誰にも知られないって、辛いことだ。

「お前さんにその意志があるのなら、徹底的にぶっ飛ばさないとな」

タバコを取り出そうとしていたが、俺は軽いボーリング玉を投げつける。

同時に走り出すと、体は軋みという名の悲鳴を上げる。

傷口からも余計な出血が迸る。

能力があればと思うが、ロベリアは龍姫のところにいる。

出来る限り、今はロベリアには頼らないでおきたい。

自分の体を酷使してでも戦わなくちゃならない。

親父はそれを避けながらも、再びタバコを取り出そうとする。

だが、手の届く範囲まで辿り着いている。

その距離、数十センチ。

横からは鉄球が飛んできているが八方目を使用し、鉄球の正確な位置を発覚させる。

懐にある先ほど拾っておいた靴を取り出す。

掌を覆うように持ち、間近くまで来たものを受け止めた。

避ければ曲がるというのなら、避けずに受け止める。

鉄球は靴を焼ききるような音を立て、回転し続けた。

その間にも俺は親父に拳の顔面にぶつけようとしている。

親父のタバコは非常に危険だ。

一度引火すれば、簡単に人を殺す事が可能な凶器に変わる。

我が親ながら、とんでもないものを生み出してきやがる。

だからこそ、出させちゃならない。