妖魔04~聖域~

もてる男は辛いな。

しかし、余裕を持っている場合ではない。

「子鉄、穏便に済ませましょう」

萌黄さんが二人を宥めた。

「隊長、最近の妖魔の動きは」

「子鉄、公共の場で退魔師としての発言は控えなさい」

「すいません」

子鉄が下がろうとしたところで、洋子の手を離れた親父が前へと出てくる。

「お前さん、何か知ってるな?」

「蛍君」

「お父さんとして、男が千鶴に近づいたと思うと、悲しくなってくる」

ジジイに引き続いて、親父をどうにかしなければならないのか。

俺だって、千鶴に近づく男は気になるしな。

「あんた達がすごい組に所属してるってぐらいしか知らないさ。妖魔の間では有名だからな」

俺は立ち上がって、吟の腕を掴んで遠ざかろうとする。

だが、俺の前に立ちふさがったのは、子鉄だった。

「この際だから、あんた達がどこまで知っているのか、ゆっくり聞きたいわ」

親父のせいでピンチだ。

よりにもよって、子鉄を前にしちまうとはな。

すぐに関わる事はないと思っていたが、都合よくいかないらしい。

敏感になりすぎているような気がするが、細かい事を気にしてる場合じゃない。

「吟、ちっと運動することになるかいいか?」

相手に聞こえないように、吟に呟く。

「ピストン運動なら大歓迎アル」

「これを抜けたら、好き放題やり放題さ」

俺達は、出口に向って走り始める。

だが、前に子鉄と傷男が立ちふさがっている。

後ろには親父がいる以上は、どっちに逃げても同じ事だった。

だからこそ、出口に近いほうへと走る。

乾夫婦や洋子は様子を伺っているだけのようだが、注意しといたほうがいいな。

俺は子鉄を、吟は傷男をすり抜ける。