妖魔04~聖域~

秋野も気付いているかもしれない。

あえて知らぬフリをしている。

自分の敵ではない。

味方という捉え方も出来るが、自分の足元にも及ばないという捉え方も出来る。

「安心して、毒は入ってないわ」

わざとなのか、勘違いをしたのか、紅茶に視線を与え続けているところを、考え込んでいるように見えたのだろう。

毒が入っていない事は解る。

純粋に紅茶のニオイしかしてこない。

俺の能力は多方面に役に立つ。

無臭だとしても、毒を嗅ぎ分ける。

存在していないものは当てはまらないが、存在しているモノなら何でも当てはまる。

静かな紅い水面は俺の顔を映し出す。

揺れ動く事のない時の止まった世界。

妖魔の世界がそれに当たるかもしれない。

ある時から、時を止めていた。

それがいい。

地球に害を与えないくらいで、時間を止めておくことこそが生へ繋がる。

カップを持つと、波紋が出来る。

今から起ころうとしていることを暗示しているかのようだ。

それもいい。

動かさなければならないものは、波風を立ててでもやるべきだ。

熱のこもった紅茶をゆっくりと啜る。

「ちょっと高級な品なんだけど、おいしい?」

紅茶と関わりのない俺にはあまりわからない。

「さあな」