妖魔04~聖域~

「傷は治ったんだ。説明しろ」

「犬神君はせっかちね」

手元に置いていた、コーヒーカップに入った紅茶を啜る。

「お前は人間に支配された世界に住み続けたいのか?」

「人生には余裕が必要よ。焦ったらミスを起こすわ」

「ふざけるな。余裕のない状態まで追い込まれているんだ」

「君は重大なミスを起こしそうなタイプね」

先を呼んだかのような言動だが、生きてきて重大なミスを起こした事はない。

里の中で生きてきたからだけかもしれない。

「少しは落ち着いたらどう?何も世界がすぐに終わるわけじゃないわ」

机の上にもカップが差し出され、紅茶が注がれる。

「リラックスしてくれないと、こちらも話し辛いわ」

「首元にナイフを突きつけられた状態で、リラックスしろだと?」

「何のことかしら?」

カマをかけてみるが、秋野の表情や感情に動きはない。

「まあ、いいさ」

秋野の他にニオイがある。

感情でいえば、無。

だが、それ故に危険。

感情がないということは、人を殺す事は容易いということだ。

生き物には感情があるのだが、隠れている者は気配しか感じられない。

姿は見えていないが、隠れているのだろう。

俺や燕に、そんな知り合いはいない。

だとすれば、秋野の駒か。

それとも、個人で動いている者か。