妖魔04~聖域~

仕事をしていないのを隠している?

「心配する必要はないわ。犬神君が思っている以上に侵食は進んでるからね」

「どうだかな」

「少しは信じてもらいたいところね」

「結果を見せるまでは、信用に値しない」

「じゃあ、君に信用してもらえるように、早く傷を治さないとね」

傷口に触って、状況を確かめる。

「騒ぎの時から言えば、15分前くらいね」

目を閉じて、魔力を込め始めた。

「死より出でて生に戻りたまえ」

言葉に乗せて能力を発動させる。

能力は、詠唱を必要とするものもある。

弱くても、強くても、詠唱しなければコアに刻まれた能力の読み取りが出来ない。

何で区分されているかはわからない。

俺の能力だって言葉がなければ、発動できない決まりがある。

隙が出来て、相手に先手を打たせる危険性はある。

とても面倒だが、使い方によっては強くなるので納得している。

傷口をこするようにスライドさせていくと、手品のように傷がなくなっていった。

痛みも、血も流れない。

指先を動かしても、何の支障もない。

秋野の能力は危険だ。

一瞬、回復に用いられるものかと思ったが、使い方を変えれば敵を簡単に薙ぎ払うことも可能だろう。

「睨まれると怖いわ」

瞬時に作られた微笑みを向けているところ、世の中に怖い物などないと語っているようだ。

「お前のほうが十分、怖い」

能力を見せる事は相手を有利にするということだが、秋野には関係なさそうだ。