妖魔04~聖域~

「秋野、湊か?」

「あなたの待ち人よ」

秋野は、人差し指と中指で紙を挟んでいる。

そこに、俺と落ち合うように書かれているのだろう。

「ちゃんと落ち合う場所くらいは書いとけ、面倒くせえ」

「それは上の人に言ってもらわないと、私のミスではないわ」

秋野は俺の近くまでくると、血に塗れた腕を見る。

「長老から、騒ぎを起こすなと言われなかった?」

「退魔師とこいつに言え。俺は全面的に被害者だ」

狸寝入りしているだろう、燕を指差す。

「いい加減、起きろ」

エルボーを腹に射ち落とすと、わざとらしくあくびをしながら起きる。

「きゃ!」

胸元を隠しているが、破いた箇所は腕の袖だ。

戦闘中も確実に起きていたのだろう。

「あら、彼女も連れているようね」

「お前は良い奴だな」

いつの間にやら、燕が秋野の肩に手を乗せている。

「あなたは彼のことが好きなのね」

「ブラックホールの中に一緒に飛び込みたいくらい好きだぞ」

燕はどこまでいってもアホだ。

アホは死んでも治らないから、放置するしかない。

「燕、いい加減にしろ。秋野、早く段取りを教えろ」

燕と秋野のやり取りには付き合ってられない。

「犬神君で良かったかな?」

「ああ」

「急いては事を仕損じるよ」

秋野がウィンクするが、余計な時間でしかない。