妖魔04~聖域~

いつもなら燕がさっさと起きるのだが、今日は寝こけている。

早く治療を施した方がいい。

魔力も同時に減っているので、何かあった際に能力が発動できないのは厄介だ。

走り続けた結果、誰もいない校舎の裏に辿り着く。

陰になっていて、誰も来る気配はなかった。

燕を地面に下ろすと、隣に座り込んだ。

「ち」

燕のカッターシャツを破って傷口に巻く。

傷がついたのも燕のせいなので、破った事の文句は言わせない。

「面倒くせえな」

速攻で修羅場に当たるとは思っていなかった。

一歩間違えれば、確実に死んでいただろう。

気性の荒い女、冷静な女。

退魔師の中でも、色んな組織に分かれているのか?

どちらにしろ、敵に変わりない。

手を出せば、私服の女も止めにかかるだろう。

傷の痛みは引きそうにない。

深くはないものの、塞がるまでには時間がかかりそうだ。

「とても辛そうね」

気配はしなかった。

少し離れた場所には白衣を着た女が立っている。

女から魔力を感じる。

面識がなく、学校にいる妖魔。

一つの場所に溢れるほど妖魔がいるわけでもないだろう。

だから、俺の目的の女だと判断する事も出来た。