「刃さんは、何で街に?もしかして、代表として派遣されたの?」

「まあな」

「そうなんだ。通りで、お姉ちゃんと一緒なんだね」

何が嬉しいのかわからないが、妹は笑っている。

「上手く利用されたってわけだな」

「入る時は暗号を言うだけでもいいんだけど、出る時は上層部からの許可と一時的な音声登録を結界に施さないといけないからねえ。今年は代表者が出る年だったから、代表者と一緒に出ちゃえば許可も何も必要ないんだもんね」

必要のない説明を勝手に語り始めた。

「ダラダラと面倒な説明ご苦労な話だ」

頭に鈍痛と衝撃が入った。

「何すんだ、テメエ」

痛みの走る頭を抑えながら、拳を握った冬狐を睨む。

「美咲がレクチャーしてるんだから、マジメに聞きなさい」

「必要か?」

「君は勉強不足なの。情報は吸収するべきよ」

「真夜中にレクチャーもクソもあるか」

近くにある時計の短針はニを刺している。

集中力が欠けて、情報は右から左に流れていくだけだろう。

「美咲、こんな時間まで何をしていたの?」

「飛鳥さんが来るかなと思って辺りを探ってたんだけど、見つからなくてさ」

俺達は高速というスピードが出せる場所に乗ってきた。

先に飛鳥が到着できるとは思えないがな。

「飛鳥が保守派としてこの街に来るのか?」

飛鳥とは別の場所に行くと思っていたのだが。

「うん。報せがあってね。刃さんは改革派の代表だよね?」

「ああ」

簡単に情報を教えても良いのか。

組織は違えど同じ妖魔だからという理由もあるかもしれないし、冬狐と仲がいいせいかもしれない。