君が好きだから

そのとき、トントンと人が近付いてくる気配がした。


ミユはとっさに携帯をしめ、元の場所に戻す。


「お待たせ~っと」


何も知らないコウタが部屋に戻ってきた。


「お、お帰り」


動揺を隠しきれないミユ。


沈黙に耐えきれなくなり、ミユは


「ごめんコウタ。急用できちゃった。今日は帰るね」


と言い、カバンを持つ。


コウタは


「お~。じゃーなー」


と、目も会わさずに言った。


…ひきとめて…くれないんだね…


涙がこぼれそうなのをこらえて、ミユは部屋を出た。