僕と私で友達

バタバタと階段を駆け上がる足音。
じゃあねの一言も交わさず家へ入った。

暗い廊下、リビングには野球を見ながら煙草を吹かす父さんだけが居た。

「ただいま、母さんと七海は?」

「おかえり、塾の面談に行ってる。飯は冷蔵庫の中に入ってるからな」

テレビから溢れる歓声と実況。
野球好きの父さんは、きっと俺をプロ野球選手にしたかったんだろう。
昔から父さんは、少ない休みでも公園に連れて行ってくれた。

「どっちが勝ってるの?」

「赤い方、新人ピッチャーが凄いんだ」

ソファーに座る父さんは、やけに小さく見えた。
冷蔵庫の中から夕飯と牛乳を取り出す。
ここのとこ、夕飯に牛乳が欠かせない。

「そうだ、成海、高校はどうするんだ?」

「あぁ、行くよ絶対。でもドコかはまだ。」