【短編】素直じゃない




智樹を無視して歩きだす。


「直ーなんで急に素直じゃなくなったんだよ!」


「うっさい!」


あんたが今日は素直とか言うからでしょ?


言われたらこっちだって……


「素直じゃない直きらーい」


ズキッ


嘘でもそんなこと言ってほしくなかった。


傷ついた。


「あれ?直?」


「……あたしも嫌い、こんな自分」


ポツリと呟いて歩く速度を速める。


早く行かないと泣いちゃう。


泣き顔なんか、智樹に見せたくない。


「直ー」


「…ン?」


「ごめん、俺。さっきの言葉冗談だから」


「…ううん。あれ、本心でしょ?あたしもこんな自分嫌いだ、から」


我慢出来ずに最後はちょっと声が震えてしまった。


あたしってやっぱり素直じゃないんだよね。


改めて実感する。


もう少し、素直になろう。


そう決心して、校門を出るとギュッと後ろから抱きつかれた。