【短編】素直じゃない




「店って、パン屋?」


「そう。親父がもう歳だからお前継げって言われて…俺は高校卒業してから継ぐつもりだったのに」


プーッとほっぺを膨らませて言う智樹を見て笑ってしまった。


「まぁいいんじゃない?智樹勉強できないんだし」


「まぁそっか。ってひど!」


やっぱ智樹変わった。


ほんとこんな奴だっけ?


「智樹のばーか」


「あ?お前のほうがバカだ!」


「あ、元の智樹に戻った」


「えッ…?」


智樹はきょとんとしていた。


あたしはやっぱ元の智樹がいいな。


「いや、なんでもない」


「直も今日は素直だけどな」


ポツリと言われて、顔が赤くなる。


な、…


そんなこと言うならもう絶対。


「素直になんかならないから!」


「えッ?」


「じゃーね智樹バイバイ」


「え?一緒に帰ろうよ」


「は?何言ってんの?」


「直~」