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翌日の四時限目、今日もそろそろ昼休みになろうとしているころだった。
そしたらまた愛沢がお弁当を持ってくるんだろうなぁなんて溜め息をついたとき、俺の太ももの辺りで携帯が振動する。愛沢だ、と直感しいつものようにスルーしようとしたが、昨日のお弁当が効いたのか気づくと俺は携帯画面を開いていた。
…内容は、こうだ。


ごめんねっ!
今日は、用事があって
一緒に食べれないの…

お弁当は
机の中に入れといたよっ!

多架斗くん、
そんなにさびしがらないでね…?
用事が終わったら
すぐ行くつもりだし
放課後も
チャイムが鳴ったら
コンマ一秒の間も入れずに
すぐ、すぐ多架斗くんの
ところに行くから!
大丈夫っ、離れても
多架斗くんのこと大好き!
愛してる!


「…あっつあつだねぇ」
「…だな」
「うわぁぁああっ!!」
突然背後から聞こえた岡田と山瀬の声にあせって携帯電話を落としそうになる。お前ら覗くなよ!、と怒鳴ろうかと思ったがその前に心臓を落ち着ける。なんでこんなにあせってるんだ俺。いやびっくりしただけだ、きっと。
「あれ、え、授業は…?」
「そんなもんとっくに終わったわよ。それにしても愛沢さん、ほんっと健気よねぇ…」
「だよな。素直だし、かわいいし」
「…俺にも一応選ぶ権利はあるんだよ」
大体お前彼女いるだろ、と山瀬に注意しつつ机の中に腕を突っ込む。…本当にお弁当が入っていた。いつの間に。
しかも昨日と同じく蓋からして温かい。あいついったい授業どうしてるんだ。
「そんなに愛沢さんいやなのぉ?」
岡田は意外だとでも言うように目を丸くすると、そのまま机にドカッ!、と腰掛けた。そこは山瀬の机なのだが、歯向かう者は誰一人としていない。うちのクラスは絶対王政なのだ。
平たく言えば、岡田は怖い。
「そういうのじゃなくて、気持ちの問題。かわいいからって許されるにも限度があるんだよ」
パカッと弁当箱の蓋を開く。中には豪華なおかずの品々とデコ弁というのだろうか…‘I love Takato’という文字が鮮やかなハートとともに彩られていた。
「………」
「………」
「な? 耐えられるかこれ」