「私……水瀬さんのことが好きです」


……言った。とうとう言ってしまった。


痛みをこらえるようにぎゅうっと目を瞑る。


答えは聞かなくても知っている。


「……ありがと、理香ちゃん」


水瀬さんの優しい手が降ってきて、慰められるようにそっと頭を撫でられる。


「ごめんね。理香ちゃんの気持ちには答えられない」


振られたというのに、触れてもらえて嬉しいと思っている。


私はどうしようもない阿呆だ。


水瀬さんの左手の薬指には指輪がきらめいていることにとっくに気が付いているのに。


今日はお店が休みだから、指輪をつけているのだろう。


私は申し訳なさそうに謝る水瀬さんに向かって、大きく首を横に振った。


「良いんです。結婚していること、知っていましたから」


……振られることは覚悟の上だ。


水瀬さんを困らせたいわけではない。


ただ、伝えたかっただけ。けれど、それもわがままなのかもしれない。


「そっか……。知っていたんだ」


水瀬さんは明らかにホッとしていた。私が何も知らずに告白していたら、更に後味が悪いに決まっている。


「じゃあ、これからもあずなと仲良くしてくれるかな?あずなも理香ちゃんのことを気に入っているみたいだから」


ん?


良い子良い子と撫でられていることに違和感を覚える。