「あーあ……。なんで男の人なんて好きになっちゃったんだろう……」


どんなに美味しい料理を食べてもこの心は癒されない。


水瀬さんを好きにならなければ、きっとこんな切ない気持ちにもならなかった。


「なんで私ってこんな風になっちゃったんだろう……」


女であることを放棄して、可愛く着飾る努力もしない。


自分の好きな花園に閉じこもって、現実を見ようともしなかった。


水瀬さんに告白する勇気もない。


ましてや振られる勇気もない。


その結果がこのざまだ。


……あろうことかにっくき魔王をヤケ酒に付き合わせた挙句、おんぶで運ばれている。


「普通になりたいなあ……」


せめて普通の女の子だったら、水瀬さんに告白できたかな?


「可愛くなりたいな……」


可愛い女の子になれたら、水瀬さんの前でもおどおどせず堂々としていられた?


ずびっと鼻をすする。涙がでてくるぜ、こんちくしょう。


……もう嫌だ。こんな自分いなくなってしまえば良いのに。