私は店の階段の前で茫然と立ち尽くした。


「うそ…」


いない…。


ピエール様がいない!!


いつも魔王の意のままに操られる哀れな私を見送ってくださったそのお姿が忽然と消えてしまったのだ。


も、ももも、もしかして!!


人間に愛想をつかして天界に帰られてしまわれたの!?


そんなぁ!!、と動揺のあまり叫び出す寸前になってあっ、と思いついた。


そっか。営業日じゃないからどこかに仕舞われてしまったのかも…。


残念だ。師と崇め奉るピエール様の激励をぜひいただきたかったのに…。


意気消沈して階段を上る。


「こんにちはぁ…」


思いっきり肩を落として扉をくぐった私を出迎えてくれたのは…。


「こんにちは、理香ちゃん」


あなたは第二の太陽ですかってくらい眩しい水瀬さんだった。