紅佐離


「なぁ、お前は何者だ?」

「人に聞く前に自分から名乗れ」

「…俺は、村岡奏だ」

「村岡…ん?
 あ、あんたって貌龍に
 入ってるんじゃなかったっけ」


私は帰るって言ったが、
名前を聞いて誰だか思い出してしまって
帰る気がなくなってしまった。

それよりも少し話がしたい、
という気分に…。


「そうだ、てかなんで知ってんだよ」

「勘」


って言うのは嘘。

一度『貌龍』の倉庫に拓兄忘れ物を
届けに行った時に会った記憶があったから。

確信は持てなかったけど名前でわかった。
拓兄に教えてもらったから。
拓兄の後輩で仲が良いらしい。


「あっそ、で、お前は?」

「私は、桜沢舞莉」

「桜沢って…どっかで聞いた事ある…」


うん。だろうね。
拓兄と名字一緒だし。

聞いたことがあるのは当たり前だよ。

そーだ♪
良い事思いついたー。


「ねぇ、あんた。
 村岡だっけ?ちょっと付いて来て」

「んでだよ、ゼッテー嫌だ」

「へぇー私の誘いを断るんだ?
 ざけんなよ?意味もなく巻き込んでおいて」


私は少しだけ殺気を出して村岡に言った。

すると、少しだけなのにビビったのか。


「っ!わかったよ」

「それでよし!ほれ行くよ」


私は転がってる男たちを
避けて前へ進んで行った。