「よし、行くよ」

「はい」

一緒に帰ると言っても私は淳哉を迎えに行かないといけない。途中で別れるつもり。

「もしかしなくてもだけど、あたしと帰ってるときは気使わないでいれるけど、そうじゃないから和十や稜牙と一緒に帰るの嫌なの?」

「え、なんでそう思うんですか」

「だっていつも帰る時は髪ほどいてるくせに今は縛ったままじゃん?だからそうかなって。しかも眼鏡もそのままだし」

「なにも言えませんね」

「じゃそーゆーことなんだ」

そう。

今の私は憂の前だけでは本当の自分で居られていると思う。周りに誰かいる場合は別。

「はい」









「遅いっつーの」

下駄箱には和十くんと稜牙くん。待たせてしまったようだ。

「すいませんね!女子は色々準備があるのよ」

嫌みたっぷりな言い方をした憂。憂が悪い訳ではない。私を気にかけてくれたから。素直に謝った。

「じゃ、レッツゴー!」

なんだが凄くテンションが高い和十君。
私は、稜牙君の傍まで行き謝罪の言葉を述べる。面と向かって話をしたことがないので言葉が返ってくることはあまり期待してなかった。

しかし「気にすんな」と言う言葉をくれた。正直嬉しかった。

短く素っ気ない言葉とは裏腹に、なんだか優しさを感じられた。

「なあなあ!今からカード見に行こーぜ」

凄くウキウキしている和十くん。今からか。無理だな。

「憂…」

私は憂に助けを求めた。

「和十~、舞莉は無理だよ」

「何でやー」

せっかくの誘いを断ることは申し訳ない気持ちが押し寄せてくるが、私にも行かなければならない場所があるため断りの言葉を繋げる。

「ちょっと用事があって…」

「そーか、なら仕方ねーな。急だしな!じゃ、佐々木は行くか?あと稜牙も」

普通に接してくれる。何気ないことなんだろうけど私はそれで温かさを受け取った。

「あたしは暇だし付き合ってあげる」

「俺はパス。カードのことはわかんねえよ」