只今6限目の授業中。

と言っても“自習”なのでみんな好き勝手に話して、遊んでいる。いいのだろうか、と思いつつも私は後ろを向き憂と話をしている。

「舞莉」

とても真剣な表情で名前を呼ばれたため吃驚した。

「な、なんですか?」

「今日は、どういう予定なの?」

予定か。いつも通りだけど。

「えっとですね…弟の淳哉を保育園に迎えに行って…」




桜沢淳哉(さくらざわじゅんや)
  年長組(舞莉の弟)



「淳哉君ね~!今度一緒に遊ぶ?」

「本当ですか?嬉しいです!淳哉も喜びます!」

淳哉は憂のことをもう一人の姉のように慕っている。だから、きっと喜ぶ。

「はは。舞莉の方が嬉しそうなんじゃない?」

「そ、そんなことありませんよ…」

なんだかすごく嬉しかったから、つい…。

「そんで?その後はまた買い物行くの?」

「いえ。この前買い出しに行ったばかりですから。冷蔵庫の中にあるもので夕食は作れます」

久しぶりにコロッケが食べたい。淳哉もコロッケ好きだし。

「そっか!頑張ってね。でも、あんまり無理しちゃ駄目だよ」

「はい!ありがとうございます」

憂は本当に優しい。こんな私の傍に居てくれる。汚れきった私の全てを知ったらきっと目を瞑ってしまうかもしれない。手を振り払われるかもしれない。でもそんなことがないって信じたい。いつかきっと話してみせるよ。