「では、通らせていただきまーす
つーか、殴ってさーせんしたー」
でも、あっちから吹きかけてきた喧嘩だからきっと許される。
足留されたけれど時間はあまりかからなかった。
地面に落ちているビニール袋を拾い上げ、帰路を急いだ。
-ガチャ…-
「ただいまー」
リビングのドアを開けて中に入って行く。
「ねぇちゃんおかえりー」
私は淳哉の頭をなでた。
「おかえり」
「稜牙君、ありがとう」
声をかけた。が、返事が返ってこない。
なぜだ。
「稜牙君?」
「…お前…桜沢か?」
「はい、他に誰が…」
あ、髪おろしたままだ。
やばいよな。
「髪おろすと変わるな」
独り言のようにつぶやいた。だが私は聞こえた。
その“変わる”とはいい意味なのか、悪い意味なのか。
私にはわからない。
「ねぇちゃん、コロッケまだ?」
「あ、ちょっと待ってて。
後ちょっとで終わるから」
私はダッシュでコロッケを完成させた。



