「俺が中学生のとき、
 父さんは父さんで、
 母さんは母さんで遊んでた。
 俺がどうこう言ったって
 どうにもならねーし。
 俺は黙ってた。
 けど視界に入れたくなかった。
 お互いが違う相手と
 寝ようとしてるところなんて。
 でもどうしても
 視界に入る毎日だったんだ。
 だから俺は夜に外出るようにした。
 夜ってガラのわりぃ奴ばっかで。
 外出ては絡まれて、
 ボコボコにされる毎日だった。

 そんなんばっかだったから
 喧嘩が身に付いた。
 んでいつからか分かんねーけど
 闇虎って名前が付いたんだ。

 それに…
 弟はその頃まだ11歳くらいだったから
 余計誰も信じようとしなくなった。

 兄貴もいんだけど…
 弟と兄貴は一緒に居たんだと思う。
 俺2人のことよく分かんねーんだよ。
 自分の事もコントロール
 出来てなかったから…

 でも…
 弟は一番苦しかったと思う。
 兄貴は兄貴で勉強ばっかしてたから。
 俺は暴れてたし。
 アイツの相手してやれなかったから…」


稜牙君にそんな過去が
あったなんて知らなかった。

なにか抱えているのかな…
と思ったことはあったけど。


「稜牙君は今、
 弟さんと理解しあえてるの?」

「どうだろうな…わかんねー」

「だったら聞いてみたらどうかな。
 お互い思い出したくない過去だとしても
 消せるわけじゃない。
 ちゃんと向き合う日がいつかは来ると思う」

「そうだな…でも切り出せねーかも」

「弱気になってどうするの?
 不安かもしれないけど私が支えるから。
 苦しくなったら言って下さい」


愛花音さんが私に勇気をくれたように。
私も稜牙君に勇気をあげたい。


「……さんきゅ…」


え…稜牙君、顔赤い。
私何か変なこと言った?