紅佐離


私と淳哉は稜牙君が待っている正面門へ戻る。

「ねぇちゃん。なんでかみのけしばってるの?メガネまである」

淳哉は頭の上にハテナを沢山並べて私に質問した。稜牙君も同様にハテナを頭上に並べている。
別に普段言われる分には問題ないのだが、稜牙君がいる前でその発言は抑えていて欲しかった、と心から思ってしまった。

「ねぇちゃん、なんで?」

可愛い表情で私を見つめてくるもんだからもうなにも言い返せない。

「なんでもいいの、気にしなくていいの!わかった?」

「やだ」

即答。

「じゃあどうすればいい?」

「かみのけおろしてあとメガネもやだ」

「嫌よ、今日のご飯コロッケにしようと思ってたのにな。やっぱやめようかな」

「コロッケ…」

これはもしかしなくても私の勝利な予感。小さい子とこんな小さな事で言い合いになるなんて大人げないかもしれない。けれど私の今の状況からすると大問題なのだから仕方ない。

「桜沢」

「はい」

「こいつお前の弟?」

淳哉の事を言っているらしい。

「はい、私の弟です。淳哉、挨拶」

「さくらざわじゅんやです。ねんちょうくらすのモモぐみです」

「俺は佐伯稜牙。お前のねぇちゃんと同じクラスだ」

お互い自己紹介をした。
淳哉の一生懸命な自己紹介。ちょっと噛みそうになってたけどちゃんとできたね。

「おまえじゃないぞぼくはじゅんやだ」

「淳哉」

なんだか申し訳ない。

「稜牙君すいません」

「淳哉面白いな」

面白いって言っても稜牙君、表情の変化がわからないよ。
感情を表に出さないタイプなのだろうか。