午前2時頃、奴が目を覚ました。
ベッドから起き上って、辺りを見回しながら状況を判断している。
囚人の朝は早いってのに、隣でゴソゴソと迷惑な話だ。
・・・まぁ、俺には関係ないけど。
そう思っていると、奴が俺の存在に気が付いたらしい。
慌てて布団に潜り直してしまった。
「・・・・・・・・・」
「・・・ぅー・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・おい」
「・・・、!・・・・・・な、なに・・・?」
・・・声、かけちまった。
奴は潜っていた布団から顔だけを出して、観察するようにこっちを見た。
まるで子供みたいな奴だな、と思った。
「名前は?」
「あ、え・・・、と、その・・・っ」
「ねーの?」
「あ、る!あるっ!あの、・・・俺、ケイっていうの、!」
ケイ、ね。
名前まで女みてーな奴。
奴の顔を見ずにそう思っていると、奴は何を思ったのか布団から這い出て、こっちへと来た。
さっきまで怯えてただろ、お前!
・・・と思うが、口にはしない。
奴は恐る恐る俺のベッドに手を掛けたかと思うと、突拍子もなく言葉を発した。
「ね、・・・怖い?」
「・・・は?」
「・・・ここ・・・怖い・・・?」
こいつはいきなり何を言い出すんだ。
「・・・別に、怖くねーけど」
「ここ、怖いの。・・・怖いのっ!・・・お、れ、・・・俺、悪いこと、してないのにっ!なんで?ねぇなんでっ?なん、・・・ぅあ、あああ、あ・・・あああぁああああああーっ!」
・・・っいきなり泣くな叫ぶなうるさい!
俺に、子供みたいに泣き叫ぶ奴を泣き止ませる術なんてない。
というか、何故泣く!
何なんだ一体。
奴は一体なんなんだ!
「や・・・ぁ、やだ、・・・やだぁっ!・・・怖いぃぃぃっ!助け、てっ!やぁあああっ!やあぁああああああーっ」
「お、おい!」
「っ、!…ごめ…ごめんなさいっごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃぃぃぃ!うあぁああああああーっ!」
・・・何か、ある。
直感でそう思った。
こいつの異常なまでの子供っほさ、怖がり様。
精神的に何か、抱えている。
これは、
トラウマ、か?

