「……出るんだよ……『熱函(ねっかん)』道路は!」


熱函道路というのは、こちらから熱海へと向かう時に通る峠を越える為の有料道路の事で、夜になるとこの道路は無料になります。


「出るって、何が?」



「コレだよ!」



僕の問いに対して、Kさんは自分の胸の前に両手の指先をぶらりと下げて答えるのです。


その仕草が現すものと言えばもう一つしかありません。


「ええっ!熱函って、幽霊が出るんですか?
……でも、そんな話聞いた事が無いですよ?」


俗に言う幽霊スポットというのは、この辺りの地域にも幾つかありますが、熱函道路に幽霊が出るという話は今まで聞いた事がありませんでした。


「そんな事言ったって、実際に見ちまったんだからしょうがねぇだろ……」


なんとKさんは、その熱函道路で以前に幽霊を見たというのです。


そして、その時の様子を声を低くして臨場感たっぷりに僕達に聞かせてくれたのでした……