公園に着くと、一瞬、一年前の俊也と公園に出掛けたあの日に戻った気がした。俊也は先に来てあの桜の木にもたれかかっている。
「ごめん、お待たせ」
美由は俊也に息をはずませ、駆け寄る。
「もう来ないかと思ったよ」
「ついみんなとのやりとりでね…」
「いいよ。つぅか、オレもさっき来たところだし」
俊也もそのまま来たんだろう。自転車とその籠の中には卒業証書の筒が入っている。
「俊也、東京にはいつ?」
「明日の午前に出るよ。東京に親戚の家があるからしばらく世話になる。最初はみんなに反対されたけど、自分の気持ち伝えたら分かってくれた」「よかったじゃん!頑張ってよね!」
美由はうれしかった。俊也が夢を追い掛けて頑張っている姿が美由は特に好きだ。最近それに気付いた。
2人で桜の木の下に腰を下ろす。あの時と同じ晴れ渡った青空、美由は深呼吸すると俊也に向き直った。
「俊也に今日どうしても伝えたいことあるの。」「ん、なに?」
「私ね、ずっと小さい頃から俊也のこと好きだったの。初恋も俊也だったし、今も実際俊也のこと考えるとドキドキするの。十年以上の片思い…かな。 今日それだけ伝えたくて。とにかく東京行っても頑張ってね」
何度も泣きそうになり、どもりながら何とかそれだけ言うと、美由は立ち上がった。
「待てよ、美由!」