しかし、それでも階下に降りようと足を前に出す。

《立ち去れ──》

 今度は杜斗の耳にもハッキリ聞こえた。

 体が強ばって動けない。

「……っ」

 それでも、杜斗は下に降りたい衝動にかられて足を動かした。

《それは勇気とは言わん》

「ひっ!?」

 すぐ近くで聞こえて、時弥は引き気味に声を上げる。

「かっ、帰ろうよ……!」

「いや……今のは」

 杜斗は険しい目をして、後ろを振り返った。